新刊短評『Barolo and Barbaresco: The King and Queen of Italian Wine』 Kerin O'keef


この年末年始に、Barolo and Barbaresco(2014)という本を読みました。著者はKerin O'keefeというアメリカ人のライターさんで、今はWine Enthusiastのイタリア担当エディター。その前はDecanterに主に書いていたようです。Brunello di Montalcino(2012)という前著も合わせて読みましたが、いやあ、筆力のある方ですね。

さて、そのバロ・バル本に書かれていたことなのですが、丘陵地にあるバローロやバルバレスコのワイナリーでは、1980年代に入るまで水道が完備されていなかったのだそう。麓を流れるタナロ川から丘の上まで水をくみ上げるのは、あまりにコストが高かったからです。生産者たちは井戸水に頼っていたのですが、毎年晩夏から初秋ぐらいの時期になるとその井戸も枯れてしまったといいます。そのため、1970年代に至るまで、バローロ、バルバレスコのワイナリーにおいて、ほとんど水を使わずにワインを仕込むのは当たり前のことだったと書かれていました。これは相当びっくりな話です。ワイナリーで働くということは普通、四六時中何かを洗っているのとイコールなんですもの。

1980年代に始まるモダン・バローロ革命を語る際、新樽や回転式発酵タンクばかりが話題に出るわけですが、水道が通って水をふんだんに使えるようになったことが、実はとても大きかったのだと著者は述べています。1970年代以前の「伝統的」なバローロを批判して、「拙劣な醸造に基づく不潔なワイン」と言うことがありますが、それは水がないからしょうがなかったのだと。実際、水道が通って水が使えるようになると、伝統的な手法でもクリーンなワインが造られるようになっています。水、エライ。

とまあ、そんなためになるお話がいろいろ書かれている本でして、ブルネッロ本ともどもおすすめであります。